難しいことを簡単に説明すること


簡単に説明することは難しいです…

 

アートとは何か

先日、読んだ本の中に、ブライアン・イーノとベッテ・Aの共著である『アートにできること』がありました。
イーノは、音楽が好きな人ならご存じの有名な音楽家のひとりです。
もともと、ロキシーミュージックというロックバンドのキーボード担当で、私の中ではかなりサイケデリックなイメージの強い方でした。
バンドが本格的に売れる前に離脱し、ソロ活動をおこなうようになりました。
ソロでは当初はロキシーミュージックの延長線上でしたが、途中からいわゆる「環境音楽」へ作風が切り替わりました。
イーノはアートスクール出身という事もあり、アートへの造詣が深く、音楽以外のアート作品を多く世に出しています。

そのイーノが、アートの果たす役割を、絵本のようにわかりやすく説明したのが、本作となります。
本にはベッテの絵が満遍なく散りばめられており、本当に絵本のようです。
文章もとてもわかりやすく、アートの役割をできる限り、誰にでも伝わるようにたくさんの具体例を用いて、書いております。

難しいとはどういうことか

アート、芸術の中でも、現代美術と呼ばれるものは、「難しい」と言われることが多いです。
その役割を説明することだけでも簡単ではないのに、それをわかりやすく説明するという離れ業をイーノは試みております…。
実際にわかりやすいかどうかは、人それぞれの考えがあると思いますが、私にとってはとても興味深いアプローチでした。

私は本作を読んで、小沼純一による『武満徹逍遥』を思い浮かべました。
武満徹という日本の現代音楽の第一人者を、わかりやすく、かつ深く突き詰めて描いております。
武満徹も、難解といわれる作曲家のひとりです。
『武満徹逍遥』の中で、著者は、難解といわれるものは、慣れていないだけで、これまで人が経験している型から外れているから、難しく聞こえるのではないかとの説明を行っております。
難しく聞こえるのは、「慣れていないだけ」というのは、とてもしっくりくる表現と思います。

簡単に説明できるか

イーノも小沼純一も、現代美術や現代音楽に精通しているからこそ、難解といわれるものをわかりやすく役割を説明できるのかもしれません。
租税の世界も同様で、特に税法は難解といわれます。
難解な理由は、毎年変わることや、理論に限らず政策による改正が含まれたりすることなどが影響しているのでしょう。

税理士はこの難解な税法を、納税者にわかりやすく説明していく役目も担っております。
難解なものをわかりやすく説明することの難しさは、税理士業務に携わる中で、日々感じるところです。