「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」の増収見込み
令和5年度(2023年度)の税制改正で高所得者の所得課税について見直しがなされました。
令和7年度分の所得から開始です。
見本ですが、一億円は重いです…(左はイータ君)。
「一億円の壁」
所得税は超過累進税率といって、所得の低い人には、税率が低く、所得の高い人には、税率が高いという仕組みになっております。
このため、所得に対する所得税の負担も、所得が上がるにつれて大きくなります。
しかし「一億円の壁」といって、所得が一億円を超えると、所得税の負担が減少していくという傾向がみられています。
これは、分離課税とよばれる株式や不動産の譲渡所得の税率が所得の額の大きさにかかわらず、15%になっているため、この税率が影響しているためです。
「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」とは
この税率の不公平感をなくし、負担を適正にするため、税制改正が行われました。
改正の内容は、以下の通りです。
① 通常の所得税額
②(合計所得金額 ー 特別控除額(3.3億円))×22.5%
②が①を上回る場合に限り、②-①の差額分を申告納税するというものです。
年間の所得が30億円以上の人が対象となる可能性が大きいと言われておりますが、上記の分離課税の所得が多い人は、もっと少ない所得でも対象になる可能性が高いとのことです。
年間所得が10億円ぐらいから、この改正の対象になる人もいるようです。
税収増加の見込みは?
さて、この改正の対象になる人は、実際にどのぐらいいるでしょうか?
大和総研の試算では、対象者が200人台と見込んでいるようです。
年間の所得、しかも分離課税の負担が大きい方が対象になりますので、多くはないですね。
これらの人たちで、税収は300~600億円増加するのではないかとのことです。
所得税の年間の税収は、23兆円(2025年度予算)とのことですので、23兆円に対する300億円は、かなり小さいように思えます。
しかし実額で300~600億円となると、それなりに大きい金額と思います。
現実に対象者が多くなくても、租税負担の公平感という意味では、必要な改正といえるでしょう。