評価通達にしたがった土地の評価が否認される場合
相続税の計算で土地の評価を行う場合には、相続税財産評価通達にしたがっておこなうことが多いです。
これが認められない場合もあります。
土地の評価は簡単ではありません。
相続税財産評価通達
相続税における財産の評価方法について、国税庁が定めたものをいいます。
国税庁の内部用の通達となりますが、土地や家屋などの不動産や株式などの評価方法が具体的に定められております。
通達であるため、法律とは異なり、必ずしもそれにしたがう必要はありませんが、多くの場合、この通達にしたがって計算を行います。
評価通達通りの計算
土地の評価の場合、国税庁が作成する路線価図により行います。
路線価図に掲載されていない土地については、倍率方式という方法で評価を行います。
路線価は住宅地の道路別に価格が決められ、それをもとに計算を行います。
更に奥行補正やがけ地補正などの補正を加えて、相続税の計算で使用する価格を決めます。
路線価図で計算された価格で、ほぼ間違いはないのですが、裁判において、その方法による評価が否認されたことがあります。
平成16年8月30日名古屋地裁で判決された裁判において、そのように判定されました。
不動産鑑定士による評価
当初、裁判では、納税者が個人で評価した土地の価格と、税務署が財産評価通達にしたがって計算した価格によって争われました。
裁判の途中で、納税者は裁判所が独自に計算した土地の価格が正しいとして、当初自分で評価した価格ではなく、裁判所が提示した土地の価格に置き換えて、裁判を続けました。
税務署も、再度、計算をし直したところ、計算しなおした価格の方が低かったため、その価格が正しいとして争われました。
裁判所が別途評価した価格も、税務署が評価し直した価格も、それぞれが依頼した不動産鑑定士によるものでした。
それぞれの不動産鑑定士の評価方法が異なったわけですが、税務署の評価においては、評価が抜けている部分があるとして、裁判所の評価が正しいということになりました。
ここでは財産評価通達で評価した価格でも、個別に不動産鑑定士が評価した価格が採用されました。
財産評価通達の路線価も、不動産鑑定士も参画して、決めるわけですが、細かい個別の事情は考慮されないため、個別の不動産鑑定士による評価が、最終的に正しいという事になりました。
こまかい事情というのは、今回の裁判の例では、電車の騒音や送電線の近くなど、路線価では評価しにくい点となります。
全ての土地の評価を個別に不動産鑑定士が評価を行うわけにもいきませんので、基本的には評価通達通りの評価で、特殊な事情がある場合には、不動産鑑定士による評価という事になるのでしょう。